こそだてドクターのおはなし

【麻しん・はしか】「本当に打たなきゃダメですか?」予防接種に迷う親御さんへ。小児科医であり、一人の親として伝えたいこと |予防、健診の知識

小児救急、アレルギー、感染症、小児一般・河合亜紀先生

掲載日:2026年7月22日

予防接種に迷う親御さんへ

「先生、ワクチンって本当に必要なんでしょうか?」 診察室で、このような質問を受けることがあります。私は、こうして率直に聞いてくださることをとても大切に思っています。インターネットやテレビでは、ワクチンに関するさまざまな情報があふれています。「副反応が怖い」「本当に安全なの?」と不安になるのは、ごく自然なことです。だからこそ、どうか一人で悩まないでください。私は小児科医ですが、それ以前に二人の子どもを育てた親でもあります。自分の子どもが予防接種を受ける日は、「痛いだろうな」「泣くだろうな」と胸が痛みました。「できれば代わってあげたい」と思ったことも、一度や二度ではありません。それでも、私は我が子には、すべての定期予防接種を終了しました。それは、注射の数秒間の痛みよりも、感染症によって命や将来の健康が失われるリスクのほうが、はるかに大きいと思っているからです。

親として小児科医として「麻疹(はしか)」との向き合い方

中でも、麻疹(はしか)は決して「昔の病気」ではありません。ワクチンの普及によって日本での患者数は大きく減りましたが、海外から持ち込まれたウイルスなどをきっかけに、今でも流行が起こることがあります。そして、一度感染すると非常に感染力が強く、肺炎や脳炎など重い合併症を起こし、命に関わることもある感染症です。私自身、小児科医として忘れられない経験があります。保育園で麻疹ワクチンを接種していなかったお子さんから感染が広がり、まだワクチンを接種できる月齢に達していなかった1歳未満の乳児が命を落としました。『現在の日本で、ワクチンによって防ぐことができたはずの命が失われた』その現実に、私は大きな衝撃を受けました。その出来事以来、「ワクチンで防げる病気は、絶対に防いであげたい」という思いは、小児科医、そして1人の親としても、より強くなりました。

ワクチン接種の注射の痛みについて

私のように、「注射がかわいそう」「痛そうだから…」と心配される親御さんも少なくありません。ですが、小児科医として24年間、多くのお子さんに予防接種を行ってきた経験では、麻疹ワクチンは接種時の痛みが少なく、「え?もう終わったの?」という表情をされるお子さんや、打たれたことに気付かないまま終わってしまうお子さんもたくさんいらっしゃいます。もちろん痛みの感じ方には個人差がありますが、親御さんが想像されるほど、お子さんがつらい思いをすることは多くありません。もちろん、どんな医療にもメリットだけでなく、副反応というリスクがあります。だからこそ、不安になる気持ちを否定するつもりはありません。

気軽に小児科に相談を!

大切なのは、SNSやインターネット上の一部の情報だけで判断するのではなく、科学的な根拠と、お子さん一人ひとりの状況を踏まえて考えることです。 「まだ決められない。」 「本当に接種したほうがいいのか相談したい。」その段階でも構いません。迷っているからこそ、小児科医に相談していただきたいのです。最近ではオンライン診療などで、小児科医に気軽に相談できる環境が整っています。わざわざ受診するほどではないと思うような不安でも、ぜひ気軽に率直にお話してください。「こんなことを聞いてもいいのかな」と遠慮する必要はありません。お子さんを守りたいと思う気持ちは、すべての親御さんに共通しています。その気持ちに寄り添いながら、ご家庭にとって納得できる選択を一緒に考えることが、私たち小児科専門医の役目です。

最後に

麻疹ワクチンは、お子さん自身を守るだけでなく、まだワクチンを受けられない赤ちゃんや、病気などで免疫が弱くなっている方々を守ることにもつながります。大切なお子さん、そして地域の子どもたちの未来を守るために、麻疹ワクチンの接種をぜひ前向きにご検討ください。迷ったときは、一人で抱え込まず、まずは小児科医にご相談ください。私が願っているのは、すべてのお子さんが、ワクチンで防げる病気で命を落とすことのない社会です。