こそだてドクターのおはなし

【麻しん・はしか】「本当に打った方がいいですか?」予防接種に迷う親御さんに、小児科医が伝えたいこと|予防、健診の知識

新生児、小児一般・北瀬 悠磨先生

掲載日:2026年7月17日

ワクチン接種を考えている親御さんへ

診察室で、保護者の方から「ワクチンを打つのが少し怖いです」「副反応が心配で迷っています」と相談されることがあります。私は、その気持ちはとても自然なことだと思っています。大切なお子さんの体に注射をする。熱が出るかもしれない。機嫌が悪くなるかもしれない。ごくまれとはいえ、強い副反応の可能性もゼロではない。そう考えると、不安になるのは当然です。特に赤ちゃんへのワクチンは、保護者の方にとって心理的な負担が大きいものです。まだ言葉でつらさを伝えられないわが子に注射を受けさせることに、胸が痛む方も多いと思います。迷うこと自体を悪いことだとは思いません。むしろそれだけお子さんのことを真剣に考えている証拠だと思います。

親として、小児科医として

私自身も一人の親として自分の子どもにワクチンを打つときには「痛いだろうな」「熱が出たらかわいそうだな」と感じました。小児科医であっても親としての気持ちは同じです。それでも私は自分の子どもには必要なワクチンを接種させました。理由はワクチンで防げる病気の重さを小児科医として知っているからです。ワクチンで防げる感染症は「かかっても少し熱が出るだけの病気」ばかりではありません。「重い肺炎」「脳炎」「髄膜炎」「難聴」など、命や将来の生活に関わる合併症を起こすことがあります。もちろんすべてのお子さんが重症化するわけではありません。ただ、実際に重い感染症にかかったお子さんやご家族の不安を目の前にすると、「防げる可能性がある病気はできるだけ防いであげたい」と感じます。

はしかについて

麻疹、いわゆる「はしか」も、その一つです。 はしかは感染力が非常に強く手洗いやマスクだけで十分に防ぐことが難しい感染症です。高い熱や発疹だけでなく肺炎や脳炎などの重い合併症を起こすことがあります。まれではありますが、感染から時間がたってから重い脳の病気を発症することもあります。つまりはしかは「昔からある普通の感染症」というより今でも子どもにとって注意すべき病気です。

ワクチン接種について

一方でワクチンにも副反応はあります。接種したあとに発熱したり、接種部位が腫れたり、機嫌が悪くなったりすることがあります。ごくまれに強いアレルギー反応などすぐに対応が必要な副反応が起こることもあります。ですから「ワクチンは絶対に何も起こらないから安心です」とは言えません。医療にゼロリスクはありません。保護者の方が副反応を心配されるのは、決して大げさなことではありません。

小児科医からみたワクチン接種に対する見解

そのうえで私たち小児科医が考えるのは「ワクチンの副反応のリスク」と「その病気に自然にかかったときのリスク」を比べたとき、どちらが子どもを守る選択になるのかということです。副反応が心配だから接種を見合わせる、という考えは一見すると安全な選択に見えるかもしれません。しかし実際にはその病気にかかるリスクを残すことでもあります。特にはしかのように感染力が強く、重症化することがある病気では、「打たないで様子を見る」ことが、必ずしも安心につながるとは限りません。 私の基本的な考えは、こうです。 ・防げる重い感染症は、できるだけワクチンで防いであげたい。 ・そして接種後の発熱や体調変化については、親として、医療者として、きちんと見守ってあげたい。

ワクチン接種に対しての事前調べが大事

ワクチンを打つことは、「副反応を気にしない」ということではありません。副反応が起こる可能性を理解したうえで、接種後のお子さんの様子を丁寧に見て、必要があれば医療につなげることです。接種後にどのくらい熱が出ることがあるのか、どのような症状なら自宅で様子を見てよいのか、どのような場合には受診した方がよいのか。こうしたことを事前に確認しておくと、不安は少し軽くなると思います。

気軽に相談を!

もし今、はしかワクチンを打つべきか迷っているなら、迷っていること自体を遠慮なく医師に伝えてください。「こんなことを聞いたら怒られるかな」と思う必要はありません。診察室で「怖いです」と言ってくださることはとても大切なことです。インターネットには、不安な気持ちをさらに大きくしてしまう情報もあります。一方で、短い診察時間の中では、保護者の方の不安を十分に聞ききれないこともあります。だからこそ、打つかどうかを決める前の段階で相談してよいのです。対面でもオンラインでも構いません。迷っているときこそ小児科医に不安を話してみてください。

最後に

私は小児科医として、そして一人の親として、はしかワクチンは大切な子どもを守るための有効な手段だと考えています。怖がらせたいわけではありません。無理に押し切りたいわけでもありません。ただ、ワクチンで防げる感染症の重さを知っている立場から、できれば接種できる時期に前向きに考えてほしい、というのが本音です。 1.副反応は親と医療者が一緒に見守ることができます。 2.不安も一緒に整理することができます。 3.不安があるままで大丈夫です。その不安ごと小児科医に相談してください。 4.そして、お子さんを守るためにはしかワクチンについて一緒に考えていきましょう。