【高シュウ酸尿症】子どもの石はサイン!シュウ酸が腎臓に溜まる前に気づくコツ|こどもの病気とホームケア
小児一般、小児救急・野田 慶太先生
原発性高シュウ酸尿症(げんぱつせいこうシュウさんにょうしょう)ってご存じですか?
「原発性高シュウ酸尿症(げんぱつせいこうシュウさんにょうしょう)」は、生まれつき肝臓でシュウ酸が過剰に作られてしまう病気です。この病気と向き合う上で、私たちがまず目指すのは、「腎臓に石(結晶)を作らせないこと」、そして「腎臓の働きを長く守ること」です。
1.なぜシュウ酸が増えてしまうのか
私たちの体では、食べ物を分解したり、エネルギーを作ったりする過程で、様々な物質が生まれます。シュウ酸もその一つです。 健康な人の肝臓には、シュウ酸の元になる物質を別のものに変える「酵素(こうそ)」という”働き者"がいます。しかし、原発性高シュウ酸尿症のお子さんは、生まれつきこの酵素が足りなかったり、うまく働かなかったりします。その結果、シュウ酸の元になる物質が行き場を失い、最終的に大量のシュウ酸となって体に溜まってしまうのです。 この病気は遺伝子の変化によって起こり、両親から受け継いだ遺伝子の両方に変化がある場合に発症します。タイプは1型、2型、3型の3種類があり、それぞれ足りない酵素が異なります。
2.治療について
・おしっこを「薄める」重要性 肝臓で余分に作られた「シュウ酸」は、おしっこに大量に溶け出します。このシュウ酸の濃度が高くなると、カルシウムと結びついて硬い結晶(石)になってしまいます。 これを防ぐための最もシンプルで強力な方法が「水分摂取」です。 ・どれくらい飲むの? 通常、健康なお子さんの2〜3倍の水分を摂ることが推奨されます。おしっこの量を増やして、シュウ酸を常に「薄まった状態」にするためです。 ・夜間が大事 寝ている間はおしっこが濃くなりやすく、石ができやすい時間帯です。そのため、寝る直前や、場合によっては夜中に起きた時にも水分を摂るなど、24時間を通して水分を切らさない工夫が大切です。
3.食事について
「シュウ酸」と聞くと、ホウレン草などの食べ物を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、この病気は「自分の肝臓の中で作られてしまう」のが原因で、食べ物から摂るシュウ酸は全体のごく一部に過ぎません。 そのため、過度な食事制限よりも、まずは「水分をしっかり摂ること」や「カルシウムを適度に摂って、腸の中でシュウ酸と結びつかせ、便から出すこと」など、医師と相談しながら正しいバランスを見つけることが重要です。
4. 医学の進歩
・期待の”新薬„ これまでの治療は、水分摂取やビタミンB6の服用(1型の一部に有効)、そして最終的には「肝臓と腎臓の移植」しか選択肢がありませんでした。しかし、ここ数年で「核酸医薬(かくさんいやく)」という革新的な新薬が登場しました。 ・どんな薬なのか この新しいお薬は、シュウ酸を作る遺伝子の働きを抑えることで、肝臓でのシュウ酸の産生を大幅に減らします。言わば、「シュウ酸工場そのものを止める」ような仕組みです。 ・メリット 月1回の皮下注射で、おしっこの中のシュウ酸を大幅に減らすことが期待できます。これにより、腎臓へのダメージを最小限に抑え、将来的な移植を回避したり、遅らせたりできる可能性がぐんと高まりました。
5.早期発見が重要
この新しいお薬の効果を最大限に発揮するためには、腎臓が元気なうちに治療を始めることが何より大切です。 ・”子どもの石„を見逃さないように 乳幼児期の原因不明の激しい泣き、血尿、繰り返す尿路感染、あるいは検診での尿異常など「もしかして?」と思うことがあれば、すぐに専門医(小児腎臓病など)に相談してください。
最後に
この病気は、かつては非常に厳しい経過をたどることも少なくありませんでした。しかし今、私たちは「おしっこを薄める」という毎日の地道な努力と、「医学の力」という強力な武器の両方を持っています。 私たち医療チームは、お子さんが将来にわたって元気に過ごせるよう、ご家族とともにサポートしていきます。