医療コラム

季節性疾患【アデノウイルス感染症】

小児救急、アレルギー、感染症、小児科一般・河合亜紀先生

掲載日:2025年10月8日

アデノウイルスの特徴

 アデノウイルスには多くの異なる型が存在し、それぞれが異なる種類の症状を引き起こすことがあります。アデノウイルスは、主に二つの方法で広がります。一つは、感染者の咳やくしゃみによる飛沫感染、もう一つは、ウイルスに汚染された物に触れた後、手で自分の顔(目、鼻、口など)を触ることによる接触感染です。このウイルスの潜伏期間は約2日から14日で、この期間は感染しても症状が現れないことが多いです。

症状

 アデノウイルス感染症の症状は、風邪に似ていることが多いです。具体的には、発熱、咳、のどの痛み、鼻水や鼻詰まりなどがあります。また、結膜炎(目が赤くなり、かゆみや痛みを伴うことがある)や、場合によっては下痢や嘔吐などの胃腸炎の症状を引き起こすこともあります。

代表的疾患:プール熱    

 プール熱は「咽頭結膜熱」とも呼ばれ、アデノウイルスが引き起こす風邪の1つです。プールでの感染が多く見られることから、日本ではプール熱とも呼ばれています。例年、6月頃から感染が増え始め、7月~8月をピークに流行することが多いです。 プール熱の主な症状としては、 ・発熱 ・喉の炎症 ・目やに ・目の充血 ・頭痛 ・悪寒 ・食欲不振 などが代表的です。  熱が出て、頭痛、食欲不振、だるいなどという症状と咽頭炎による喉の痛み、結膜炎にともなう目の充血、目の痛み、目やになどの症状が出て、3~5日間ほど続きます。  プール熱は”学校感染症”に当たりますので、発症した場合には出席停止となります。症状がなくなって、2日後から登校できるようになります。

予防法・対症療法

 アデノウイルス感染症の予防には、日常的な手洗いが非常に効果的です。外出から戻った後、食事前、トイレの後には必ず手を洗うようにしましょう。また、感染者との接触を避け、人混みの中での滞在時間を短くすることも重要です。家庭内では、タオルや食器を共有しない、頻繁に触れる場所を定期的に消毒するなどの対策を取ることが推奨されます。また、プールに入ったあとは、目や体をよく洗うようにしましょう。

まとめ

 アデノウイルス感染症に罹ってしまった場合は根本的に治療するお薬はありません。発熱は5日ほど続くことがあるため、脱水を起こさないよう、経口補水液などで水分補給したり、高熱による不快感を和らげるために解熱剤を使用しながら、こどもの免疫力で治るのを待ちます。