小児外傷【頭部打撲】
小児一般、小児救急・野田慶太先生
お子さんが頭を打った時、どうすればいい?
元気いっぱいのお子さんは、時に思わぬ場所で頭を打ってしまうことがあると思います。公園の遊具から落ちたり、家具の角にぶつかったり、兄弟げんかで頭をゴツンとぶつけたり…。そんな時、「大丈夫かな?病院に行った方がいいのかな?」と、保護者の方はとても心配になりますよね。 今回は、そんな「頭を打った!」という緊急事態に、どう判断すれば良いのか、小児科医の視点から具体的なポイントをお伝えしたいと思います。ぜひ参考にしてください。
1. 危険な頭の打ち方を知ろう
まず、頭の打ち方自体に危険が潜んでいる場合があります。 ①車や自転車などとの衝突:お子さんの年齢に関わらず、非常に強い衝撃が加わる可能性があります。すぐに医療機関を受診しましょう。 ②高所からの転落:2歳未満のお子さんの場合、90cm以上の高さからの転落は特に注意が必要です。これは、平均的なお子さんの身長や、頭部が体の中で占める割合が大きいことを考慮した目安です。2歳以上のお子さんでは、150cm以上の高さからの転落が危険な高さとされています。 ③硬いものによる強い衝撃:バットやボール、固いおもちゃなどが勢いよく頭にぶつかった場合も、頭蓋骨の骨折や脳への影響が懸念されます。 上記の状況に該当する場合は、見た目は元気そうに見えても、医療機関へ受診することをお勧めします。
「いつもと違う」感覚を大切に
お子さんの様子は、言葉にできない大切なサインを発していることがあります。以下のような症状が見られる場合には、頭の骨の骨折や頭の中の出血といった、より重い状態の可能性も考慮し、医療機関の受診を強くお勧めします。 ①意識の変化: 頭を打った直後に泣かずに反応がない時間があった、呼びかけに対してぼーっとして反応が悪い、すぐに眠り込んでしまう(ただし、いつものお昼寝の時間であれば様子見で良い場合もあります)。 ②行動の変化:ずっと不機嫌で泣き止まない、いつもと比べてやけにぐったりしている、遊びたがらない、笑顔がない。 ③消化器の症状: 何度も繰り返して吐く(一度吐いただけなら心配ないことが多いです)。 ④痛みの訴え:「頭がすごく痛い」と繰り返し訴える、痛がって頭を触らせない。 ⑤神経の症状:けいれんを起こす、手足の動きがおかしい、歩き方がふらつく、体の左右で動きに差がある。 ⑥耳や鼻からの出血:脳からの出血や骨折の可能性があります。 そして最も大切なのが、普段からお子さんを見ている保護者の方が感じる「なんかおかしい」という直感です。これはお子さんの普段の様子を一番よく知っているからこそ感じられる、非常に重要なサインです。少しでも違和感を覚えたら、迷わず医療機関を受診しましょう
「たんこぶ」にも注意
頭を打った後、まず確認するのが「たんこぶ」だと思います。多くの場合、たんこぶが直接大きな問題になることはありませんが、注意が必要なケースもあります。 ①おでこ以外のたんこぶ:頭の横や後ろ、特に柔らかい部分にできたたんこぶは、頭蓋骨の骨折や頭の中での出血を示唆する可能性があります。おでこの骨は硬いため、少々のたんこぶは比較的安心なことが多いですが、それ以外の場所にできたたんこぶは注意して見守りましょう。 ②「ブヨブヨした」たんこぶ:触るとブヨブヨして、骨との間に隙間があるように感じるたんこぶは、頭蓋骨の骨折が原因で、骨と皮膚の間に血液が溜まっている可能性があります。このような感触のたんこぶが見られたら、一度医療機関を受診することをお勧めします。 また、たんこぶ以外にも頭蓋骨の骨折を疑う所見があります。頭を打った後に、目の周りに内出血が広がり「パンダの目」のような「くま」ができたり、耳たぶの後ろに青あざができたりした場合は、頭蓋骨の骨折を強く疑います。頭を触って段差がある場合なども同様です。これらの場合は、たんこぶの有無に関わらず速やかに医療機関を受診しましょう。
6時間は慎重に様子をみましょう
お子さんが頭を打った後、特に最初の6時間の間に容態が変化することが多いです。この間に、先ほど述べた「いつもと違うサイン」が新しく現れないか、注意深く観察してください。ただ、症状が出にくい場合もあるので、頭を打った後の24時間~72時間以内は安静に過ごし、いつもと変わりがないか注意しながら経過観察を行う必要があります。そのため、もし時間が経ってからでも「ぼーっとする」「繰り返し吐く」など、少しでも気になる症状が見られた場合は、ためらわずに医療機関を受診することをお勧めします。
最後に
お子さんの頭部打撲は、保護者にとって非常に心配な出来事です。しかし、ほとんどの場合は大きな問題なく回復します。大切なのは、冷静に状況を判断し、必要に応じて速やかに医療機関を受診することです。