季節性感染症【中耳炎】
小児一般、小児救急・野田慶太先生
お子さんの耳、大丈夫?中耳炎の種類と受診の目安
お子さんが体調を崩した時、「耳を診てもらったら中耳炎と言われた」という経験をお持ちの保護者の方も少なくないでしょう。特に、耳の痛みや熱はないのに「耳の中に水が溜まっている」と言われ、「滲出性(しんしゅつせい)中耳炎」と言われて驚いた方もいらっしゃるかもしれません。実は、中耳炎は子育て中に避けて通れないと言っても過言ではないほど、お子さんによく見られる病気です。小学校に上がる前までに、90%近くのお子さんが一度は経験すると言われています。今回は、そんなお子さんの「中耳炎」について、「急性中耳炎」と「滲出性中耳炎」の違いを中心に、それぞれの特徴と、どんな時に病院を受診すべきかをお話ししたいと思います。
中耳炎はなぜ子どもに多いの?
まず、なぜ子どもは中耳炎になりやすいのでしょうか?その理由は、子どもの体の構造と免疫力にあります。 ①耳管(じかん)の構造: 鼻の奥と耳の奥(中耳)をつなぐ「耳管」は、大人に比べて子どもは太く、短く、そして角度が水平に近いという特徴があります。このため、風邪などで鼻やのどにいる細菌やウイルスが、耳管を通って中耳に侵入しやすく、そこに溜まって炎症を起こしやすいのです。 ②抵抗力の未熟さ: まだ体が発達途中の子どもは、全身の免疫力はもちろん、鼻やのどの抵抗力も未熟です。保育園や幼稚園などの集団生活が始まると、ウイルス感染の機会も増え、中耳炎を繰り返してしまうお子さんも少なくありません。
中耳炎には2つのタイプがある?急性中耳炎と滲出性中耳炎
中耳炎と言っても、主に2つのタイプがあります。 ① 急性中耳炎:痛みや発熱を伴う「炎症」の中耳炎 「中耳炎」と聞いて皆さんがイメージするのは、ほとんどの場合がこの「急性中耳炎」ではないでしょうか。急性中耳炎は風邪を引いたりして鼻水や痰が長引くと、鼻やのどの細菌やウイルスが耳管を通って中耳に入り、炎症を起こす病気です。 ②滲出性中耳炎:痛みや熱がなく「水がたまる」中耳炎 滲出性中耳炎は、急性中耳炎とは異なり、発熱や強い耳の痛みといった急性の症状がありません。しかし、中耳の中に液体(滲出液)がたまった状態です。水がたまるの原因は、 耳と鼻をつなぐ耳管はただの管ではなく、周りの筋肉によって開け閉めされています。この機能により、中耳の圧力が調整されています。風邪などで耳管の周りが腫れると、この開け閉めがうまくいかなくなり、中耳に強い陰圧がかかります。すると、周囲の細胞から液体が中耳に漏れ出してしまい、滲出性中耳炎が起こリマス。急性中耳炎の後に、炎症が治まったものの液体が残ってしまい、滲出性中耳炎になる場合もあります。 滲出性中耳炎は痛みや熱がないため、保護者の方が症状に気づきにくいのが特徴です。小学校に上がる前の90%程度のお子さんが一度はかかると言われる病気ですが、その多くは自然に治ります。しかし、中には治るまでに時間がかかったり、繰り返したりするお子さんもいます。長期間気づかないままでいると、難聴につながることがあります。お子さんの聞こえが悪くなると、言葉の発達が遅れたり、発音が正しくなかったりすることにもつながりかねません。
急性中耳炎の主な症状
①発熱: 3日以上続く発熱があれば特に注意が必要です。 ②耳の痛み: 耳を触ったり、しきりに耳の中に指を入れようとし たりする仕草が見られます。 ③不機嫌、泣き止まない: 小さなお子さんでは、痛みをうまく伝 えられないため、不機嫌になったり泣き止まなかったりすることがあります。 受診の目安としては、上記のような症状がいくつか当てはまる時は、耳鼻科を受診して耳の中を確認してもらいましょう。症状や鼓膜の状態に応じて、抗菌薬による治療が必要になることもあります。また、家庭でできることとしては、鼻水が中耳炎の原因となることが多いため、自分で鼻をかめないお子さんには家庭用の鼻吸い器を使ってこまめに鼻水を吸ってあげることが大切です。鼻通りを良くすることで、中耳炎のリスクを減らすことができます。
滲出性中耳炎の主な症状
①聞こえが悪いサイン: テレビの音を大きくする、大きな声で話す、呼んでも振り向かない、何度も聞き返す、聞き間違いが多い ②耳閉塞感: 耳が詰まっているような感じを訴える(大きなお子さんが自覚できる症状) ③耳を触る仕草: 耳を触ったり、頭を振ったり、頭を傾げたりして、耳の不快感を改善しようとする ④言葉の発達の遅れや発音の異常: 聞こえにくさが原因で、言葉の発達が遅れたり、発音が不明瞭になったりすることがあります。
まとめと受診のすすめ
お子さんの中耳炎は、保護者の方にとって心配の種になることが多いですが、上記の症状などを知っておくことで、適切なタイミングで対応できるようになります。急性中耳炎は分かりやすい症状が出やすい一方、滲出性中耳炎は気づかれにくいことがあります。しかし、どちらのタイプも、お子さんの聞こえや成長に影響を与える可能性があるため、気になる症状があれば迷わず耳鼻科を受診されることをおすすめします。